あなたは、優しい上司になりたいと思いますか?
たしかに、厳しくて怖い上司よりは、優しい上司のほうが部下から好かれるかもしれません。
部下や同僚から頼られる上司になりたいですよね。
いっぽうで、部下を守ることも、もちろん上司の役目。
優しさだけでは、守りきれないこともあるのです。
私は一度、「優しさをはき違えた上司」を信頼すぎたあまり、痛い目を見たことがあります。
ここでは、その経験を踏まえながら、上司としての「本当に優しさ」について考えてみましょう。
優しかった上司。でもその裏にはとんでもない問題が隠されていた…
私が以前働いていた会社で、とても優しい上司がいました。
名前をC課長としましょう。
私やほかの同僚も、みんなC課長を信頼していた…ように見えていたんですが、
実はその優しさには裏があったのです…。
優しくて理解ある上司。なんでも許してくれた
C課長は、
「とにかくなんでもやってみよう!」
と、よく言っていました。
私が、
「こんな企画を思いついたんですけど」
「こんな広告を出してみたいんですけど」
「ここに行ってみたいんですけど」
と相談すると、
「いいね、やってみよう!」
と、いつも二つ返事でOKしてくれました。
なんて理解ある上司なんだ…!と感動しながら、
たくさんのチャレンジをさせてもらいました。
そのうちのいつくかの企画は、実際に大きな収益に繋がったものもあります。
だんだん見えてきた、上司と上層部との関係性
しかし、何かおかしいぞ、と見えてきたのは、私が昇進して会社の上層部と話をする機会が増えてきた頃。
「C課長って、本当に優しくていい人ですよね」
などと私がC課長の話をすると、他の役員たちは険しい表情になったり、微妙な雰囲気になったりするんです。
(あれ?私、なんか余計なこと言ったかな…?)
と、不安になるような、神妙な空気が流れていました。
(後から聞けば、C課長と役員の間には大きな軋轢があったそうです。
今考えればそれも当然のように思えるんですが、何も知らなかった当時の私にそんな気遣いができるはずもなく…)
そんな違和感をぬぐいきれずにいるうちに、C課長は退職することに。
退職のタイミングも中途半端な時期だったので、たしかに若干の違和感はあったんですよね。
上司退職。その後に残されたものは…
C課長の退職後、部署内でミーティングが開かれました。
C課長の退職にともなう配置換えなどの事務的なミーティングかと思いきや、
ここで衝撃的な事実が告げられることに…
実は、私がいた部署は、その1年ほどだんだんと売り上げが落ちており、
いわゆる赤字状態だったのです。
そして、業績が悪化していることは私たち社員には知らされていませんでした。
私たちに知らされなかったのは、退職したC課長の方針だったとのことでした。
「自由にのびのびと仕事をし、柔軟な発想で新しい企画を出して欲しい」
という思いがあったようです。
でも、それで赤字に転落していては本末転倒ですよね…
裏切られたような気持ちになり、ショックも大きかったです。
せめて、会社の業績だけでも知らされていれば、意識が変わったかもしれない。
もちろん、私たちがみずから知ろうとしなかったことは、大きな反省です。
でも、落胆しているひまもなく、反省しながらも赤字の現実と向き合わなければなりません。
残された私たちは、業務の体制を立て直し、そこから時間をかけて徐々に売り上げを伸ばしていくしか方法はありませんでした。
優しく理解ある上司だったC課長が残したものは、大きな大きな「負債」だったのです。
上司とのしての「優しさ」って?
上司という立場であれば、部下たちや会社をまとめ上げ、業績を伸ばさなければいけませんよね。
では、上司に求められる「優しさ」とは、いったいどんなものなんでしょうか?
優しさ=甘さではないことを理解している
C課長の「なんでもやってみよう」は、果たして「優しさ」だったんでしょうか。
今思えば、部下を甘やかすことで、自分の仕事や手間を減らしていたのかもしれません。
「いいよいいよ!」と二つ返事してしまえば、たしかに何も考えずに進められて楽ですよね…
たしかに、二つ返事でOKをもらって始めたプロジェクトで、成功したものもあります。
反面、うまくいかなかったものや、途中で頓挫してしまったものも少なくありません。
C課長は、部下にも自分にも甘かったんじゃないかと、今なら思います。
部下から企画や相談を持ちかけられた以上、内容を精査し、慎重に検討する必要があったのではないでしょうか。
「面倒なことは考えない」という自分への甘さが、部下への甘さにつながっていたのでしょう。
そしてその甘さは、決して「優しさ」ではなかったのです。
部下も自分も甘やかすことなく、ストイックに仕事に向き合う厳しさこそ、上司としての本当の「優しさ」なんだと思います。
自分の中の基準が明確である
「ここまではオッケー、でもここからはだめ。」
仕事において、そんなボーダーラインを明確に定められている上司なら、信頼できると思います。
仕事におけるボーダーラインは、会社を守るためのものであり、
部下を守るためのものでもあるからです。
C課長は、自分の中の明確な基準を見失っていたんじゃないでしょうか。
たしかに、私を含め社員は、C課長のもとでストレスなく働けていたと思います。
でも、それで業績が悪化していては、元も子もありません。
たとえばC課長は、せめて、
「自由に考え、楽しく仕事をしてほしい。でも、業績につながっていなければだめだ」
ぐらいの基準は持つべきだったのではないでしょうか。
ゲームでミッションが与えられたほうがモチベーションが上がるように、
最大限のパフォーマンスを発揮するには、ある程度の制限が必要な場合もあるのです。
緊張感とモチベーションを周囲に与えられる
本当の意味で「優しい」上司は、周囲にほどよい緊張感を与えることができるんじゃないでしょうか。
私の場合は、C課長が優しすぎる(甘すぎる)あまり、その状況に甘んじてしまったんですね。
私たち社員の中にも、いつの間にか、
「別に失敗してもいいや!」
「怒られもしないし、責任を取らされることもないし」
という気持ちが芽生えていたのかもしれません。
緊張感がなく、
「ぜったいにこのプロジェクトを成功させるんだ!」
「失敗しない、必ずやり遂げるぞ!」
というモチベーションが欠けてしまったのです。
仕事への熱意を周囲に伝えることができ、自分も周りも巻き込んで共感を呼ぶことができる。
全体のモチベーションを上げられる上司こそ、本当の優しさを持っているといえるのではないでしょうか。
まとめ:忘れてはいけない3つのこと
本当の意味で「優しい」上司になり、部下の信頼を得るためには、次の3つを胸に留めておいてほしいです。
・優しさと甘さをはき違えない
・自分の中の基準を明確に持つ
・緊張感と熱意を忘れない
私にもいずれ、「上司」という立場で仕事をする日がくるかもしれません。
そのときは、プロジェクトにかかわるすべての人が達成感を得られるような仕事をしたいですね!